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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)3113号 判決 1966年12月20日

原告 並木文雄

右訴訟代理人弁護士 大政満

外二名

被告 東京証券土地株式会社

右訴訟代理人弁護士 守屋典郎

被告 早川慎一

右訴訟代理人弁護士 鈴木近治

主文

当裁判所が、昭和四一年三月二二日、昭和四〇年(手ワ)第三六七一号約束手形金請求訴訟事件についてした手形判決中被告東京証券土地株式会社および被告早川慎一に対する部分を認可する。

異議申立後の訴訟費用は被告両名の負担とする。

事実

当事者の求める裁判および事実上の主張は主文第一項掲記の手形判決中の事実摘示欄と同一であるから、ここにこれを引用する。

〔証拠関係〕<省略>

理由

一、<省略>。

二、<省略>。

三、そこで次に被告早川慎一が原告主張の手形保証債務を負担するかどうかを検討することにする。

(一)  証人早川雅子、同滝上秀道の各証言によると、前掲甲第一号証中の被告早川慎一の署名および押印は、同被告の妻である早川雅子が手記しその名下に同人が保管していた被告早川慎一の実印を押捺することによって作成されたものであることが認められ、この認定に反する証拠はない。

被告早川慎一は、右の事実をもとにして、早川雅子の右署名および押印の代行は、同人が何らの権限なく行ったもので同被告の意思にもとづくものではないと主張し、被告会社代表者兼被告本人早川慎一尋問の結果および証人早川雅子の供述中には右主張に副う供述が存するのであるけれども、右供述は後掲三の(二)の証拠にてらして措信することができず、他に被告早川慎一が本件約束手形の手形上の保証責任を負うことを否定するに足る反証は存しないのである。

(二)  すなわち、原本の存在および成立について争いのない甲第二号証、同第四号証、原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第三号証、被告早川慎一作成部分をのぞくその余の成立ならびに原本の存在について争いがなく、証人田中豊人の証言により被告早川慎一作成部分が真正に成立したものと認める甲第五号証の一、二同第六号証、証人松隈孝雄、同坂内ミノブ、同早川雅子(後掲措信しない部分を除く)の各証言、原告本人、被告会社代表者兼被告早川慎一(後掲措信しない部分を除く)の各尋問の結果を総合すると、原告は、昭和三九年一二月下旬頃、分離前の共同被告辰美産業株式会社代表者松隈孝雄から、金額八、〇〇〇万円、満期昭和四〇年三月二〇日、振出日昭和三九年一二月二一日、振出人東京証券土地株式会社、手形保証人被告早川慎一受取人兼第一裏書人辰美産業株式会社、支払地、支払場所、振出地は本件約束手形と同一の約束手形(甲第二号証はその写)の交付を受け右の約束手形を担保として辰美産業株式会社に対してその頃金四、〇〇〇万円、昭和四〇年一月中旬頃金三〇〇万円を貸付けたが、右約束手形による決済が不能となったので、原告と辰美産業株式会社間において右貸付金四、三〇〇万円につき弁済期を昭和四〇年四月二〇日、期限までの利息を金二一〇万円と定め、その支払のために被告辰美産業株式会社から、金額金四、五一〇万円、満期昭和四〇年四月二〇日、振出日同年三月二〇日、振出人被告東京証券土地株式会社、手形保証人被告早川慎一、受取人兼第一裏書人辰美産業株式会社、その他の事項前記約束手形と同様の約束手形(甲第四号証はその写)を受領し、次いで、右約束手形は、同一金額、満期昭和四〇年五月六日、振出日同年四月二〇日の約束手形(甲第五号証の一はその写)、および同一金額、満期昭和四〇年五月一五日、振出日同年五月六日の約束手形(甲第六号証はその写)に順次書替えられ、最後に本件約束手形に書替えられたものであることが認められる。<省略>また、前掲各証拠によると、被告早川慎一は、前記金八、〇〇〇万円の約束手形(甲第二号証)および右約束手形により原告が辰美産業株式会社に対して貸付けた金員の支払のために交付された第一回目の金四、五一〇万円の約束手形(甲第四号証)については、手形上の保証人として右手形上に自署していたのにもかかわらず、その後の書替手形である甲第五号証の一、同第六号証の約束手形は、被告早川慎一の秘書であった田中豊人をして代署させ、その保管にかかる同被告の実印を押捺させて手形上の保証をしていたものであったが、同被告の実印は昭和四〇年五月頃から早川雅子が保管するところとなっていたため、坂内ミノブが前示のようにして作成した本件約束手形を滝上秀道に命じて被告早川慎一宅に持参させたところ、早川雅子は本件約束手形が書替手形である旨の説明を受けて前記のように被告早川慎一の署名および押印を代行したものであることが認められるのである。

(三)  叙上のように本件約束手形が前示甲第四号証の書替手形である性質を有することと、本件約束手形の書替前の甲第五号証の一、同第六号証の約束手形の作成過程等を考えあわせると、被告早川慎一は本件約束手形についても、書替前の前掲各約束手形と同様に手形上の保証をすることを承諾していたもので、早川雅子がした前示署名の代行および押印は同被告の意思にもとづいてなされたものと解するのが相当であり前記被告会社代表者兼被告人早川慎一の尋問結果および証人早川雅子の証言は採用できない。

したがって、被告早川慎一は本件約束手形の振出人の保証人として本件約束手形金の支払義務を負担するものというべきことは明らかである。<以下省略>。

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